【薄口感想】リップヴァンウィンクルの花嫁

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※ネタバレを含む感想です。ご注意ください。

娘と夫が不在のため、久しぶりに長編映画を真面目に観ることができました。ずっと前から観たかった「リップヴァンウィンクルの花嫁」!2年前にCMを見てからずーっとずーっと観たかった映画です。

23歳の皆川七海は登録制の派遣教師。控え目な性格で声が小さく生徒からもからかわれている。ネットで出会った哲也と付き合いをはじめ、トントン拍子で結婚までいくが、結婚式に呼ぶ親族が少ないことから、結婚式の代理出席サービスを利用しようと考える。SNSで紹介された、なんでも屋の安室に結婚式の代理出席を依頼し、無事に結婚式を終えることができた。ある日、七海はリビングで女物のイヤリングを見つける。哲也の浮気を疑い、安室に浮気調査を依頼するが、その後現れた哲也の浮気相手の彼氏という男に、ホテルで強引に言い寄られてしまう。間一髪のところで七海を救出する安室。しかし哲也の浮気相手の彼氏という男は安室が手配した男だった・・・。

七海と安室のラブストーリーか、と思ってしまう序盤です。七海に恋した安室が手段を選ばず別れさせようとしているのか!ラストは七海と安室が結ばれてハッピーエンドか!と少女漫画な展開をも期待してしまうんですが、全然違いましたねー。七海がかわいそうなんですが、すんすん泣きが可愛い。そしてあのシリアスなシーンでの「アムロ、行きまーす」は笑いました。

哲也の親族の法事に出席した七海。哲也の母から浮気しているだろうと詰め寄られる。七海なりに誤解を解こうとするが、ホテルでの動画を突き付けられ動転してしまう。家から追い出された七海は持てるだけの荷物を持って安室を頼る。そのうち哲也の浮気疑惑は哲也の母によって仕組まれたことであることを知る。大泣きして気持ちの区切りをつけ、しばらくは都内のホテルで清掃の仕事をしていた七海。安室から結婚式代理出席のアルバイトを紹介され、そこで女優をしているという真白と出会う。姉妹という設定だったこともあり、すぐに打ち解け、SNSのアカウントを交換し合う2人。「リップヴァンウィンクル」-それが彼女のアカウント名だった。

七海のたどたどした性格が完全に裏目に出た展開ですね。哲也の母に詰め寄られるシーンなんか、ちゃきちゃきした女子だったらちゃんと説明しているだろうと思うんですが、そこを説明できず、しかも夫と話もせずに素直に出て行ってしまうという・・・(笑)私はイヤリング~離婚までのストーリーは安室が計画して実行したと思ってます。哲也の母から2人を別れさせてって依頼を受けて考えたと。チョコをあげるやり取りのところ、あなたから落ちに来るんです。というシーンは伏線だったのかな、って。安室なりの警告というか。こんなに簡単に手に入った結婚は簡単に崩れてしまうんじゃないか、と思っているからこそ壊れてしまう。それを思わせるシーンだったんじゃないかな、と思いました。それにしても安室からシャワーを浴びて時間を稼げって言われて、本当に浴びるんだ!って思っちゃいました。浴びる振りだけでもいいのに・・・そこが七海なんでしょうね。真白と出会ってその純真さが長所になっていきます。真白と出会って、親交を深めていくところはまさに岩井俊二ワールドですね。女の子の友情っていいよね。

しばらくして、安室から屋敷の住み込みメイドの仕事を紹介される、というか半ば強引に引き受けさせられた七海。オーナー不在の散らかった屋敷を片付けるという仕事だったが、そこには真白の姿があった。真白は七海よりも1足早くここに住み込み、仕事をしていた(してないけど)という。仲良く、とっても仲良く過ごす2人。毒を持つ魚のお世話をしたり、庭の草木に水をやったり。そんなある日真白が高熱を出す。マネージャーの恒吉とともに病院に連れて行こうとするが、かたくなに拒み、仕事場へと向かう真白。その後恒吉から真白がAV女優であること、この屋敷を借りているのは真白だということを知らされる。安室から末期がんのクライアント(はっきり真白とは言っていないが真白のこと)が友達が欲しいという理由で七海にメイドの仕事を依頼したという。すべてを悟った七海は真白にお金はいらない、こんな立派なところに住まなくてもいい。私はそばにいるから、もっと自分を大切にしてと真白に涙ながら訴える。

安室の仕事人っぷりが素晴らしいですね。あれだけ親しげにしておいて、七海に語っていないことの多いこと。一番友人として信じちゃいけないタイプの人間です。え?100万いらないすか?とかうさんくさすぎる!いい奴なんですけどね。そしてもうここらへんから真白が死ぬことしか考えられないー!もう死ぬフラグじゃーんと思いながら見てました。それにしても岩井俊二監督は女子じゃないのに、どうしてあんな女子の仲良しキャッキャ感を演出するのがうまいんでしょう。それに加えて今回は真白が死ぬっていう悲壮感も出ていて、観ていて切なくなりました。

晴れて「友達」になった2人は新しい部屋を探しに行き、たまたま立ち寄ったウェディングドレス屋さんで試着、記念撮影、指輪交換もする挙式ごっこを(そしてドレスをお買い上げ)する。水槽のある部屋でドレスのままベットに横になる2人。そこで真白は世界があまりに優しいこと、幸せの限界が人より早く来る自分はその優しさに耐えらえないということを打ち明ける。そして一緒に死んでくれる?と七海に問いかけます。七海は「うん」と返事。2人はキスをします。しかし翌朝、隣にいた真白は息を引き取っていた。

一緒に死んでくれる?と言われたら引きますよね。こいつヤベエって思いますよね。でも七海は違うんです。ここで「うん」という子なんです、七海は。今までの描写はここで素直に自然に「うん」と言うことの証明ために存在したのじゃないかというほど、印象的なシーンでした(自分的に)。それにしても真白の闇は深いですね。「私なんかのために」という思いが強くて、世界は優しいという志向に至ったんだと思いますが。同時に七海にとってはアンサーになったのじゃないかと思います。世界は優しい。七海にもきっと「私なんか」という思いはあって、「私なんかがワンクリックで彼氏が出来て、結婚して、幸せになっていいんだろうか」という問いがあったんだと思います。答えは「イエス」。時代が変わっていろんなことが「簡単」「簡素」になっても、その根底の価値は変わらない。真白が言っていたコンビニ店員が私なんかのためにせっせと商品を袋に入れてくれるって行為も、マニュアルにそっただけですよね。でも真白にとっては優しさ以外の何物でもないんです。七海も簡単に手に入った結婚ってことに目を向けずに、結婚して幸せってことに目をむけるべきだったんだよ、っていうメッセージなんじゃないかなーと思いました。ここで2人はキスをしますが、性愛ではなくてあくまで友愛のキスだったかなと思いました。でも題名はリップヴァンウィンクルの「花嫁」。あれやっぱり百合的な意味でのキスだったのか?意見が別れそうなところですね。

真白の葬儀を終え、真白の母のもとへ向かう安室と七海。飲んだくれて最初は悪態をつく母だったが、そのうち真白への思いを語り、しまいには裸になって泣き出してしまう。安室もつられて裸になって泣き、七海はお酒をあおる・・・。真白の一件が落ち着き、小さなアパートに居を構える七海。ベランダに出て左手を天にかざした。その薬指にはみえない結婚指輪がはめられていた-。

最後に母に持っていかれた!すごい演出でした。裸になり、泣きながらやっぱり恥ずかしいだけだって言うシーンは母親の自責の思いと真白への愛情が入り混じった素晴らしい演出だと思いました。ここで安室も裸になりますが、彼の性格からして演技かもしれないですよね。でもそれでもいいんです。やさしいんですこの世界は。最後の数分間はセリフのないシーンでした。以前とは少し変わった、たくましさの宿った七海の横顔が印象的でした。

思ったよりも薄口感想が長くなってしまいました。相変わらずとても雰囲気のある素敵な映画でした。岩井俊二監督の次の作品を楽しみにしています。

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